イングリッシュ ブレックファースト

土曜日の朝。前日の不機嫌さがまだ居座っていて、彼とも上手く話せなくて、お腹もすごく空いたので帰ろうとしたものの、彼の乗る電車までまだ時間があるから遅い朝食に行こうと言われ、何より彼と話したかったので、お腹が空いたまま出かける準備だけした。ちなみにこの時、彼の部屋に泊まってはいるものの、彼がロンドンに戻ってから色々あって、私達はキスもしていなかった。

 

彼の自宅は他の人に貸しているため、タイから戻ってからの彼はロンドンのセントラルとその周辺を転々としていた。大きな荷物を抱え滞在先のホテルを出た彼が移動するには、あまりに身動きが取りづらい状態だったため、駅近くの小さなカフェに入った。ローカルな雰囲気で、日本で言えば大衆食堂と言った感じだろうか。表記してあるメニューはどれも手頃な値段だった。

 

私も彼もそれぞれイングリッシュ ブレックファーストを頼んだ。私は目玉焼きとマッシュポテトが付いたもの。彼は目玉焼きとビーンズのものを選んだ。大きなお皿に目玉焼きとベーコン、マッシュドポテト(彼のものはビーンズ)、トーストがのっていた。ボリュームがあって二人とも食べきれないほどだった。私達はホテルを出る前に話していた映画の話を続けながら食事をした。私の取り出したノートにあれこれ説明をつけて書き込みながら、彼は映画の制作について教えてくれた。食後のコーヒーが来てからも、彼は熱心に話してくれた。

 

その後、大きな荷物を抱えた彼は、ロンドンからずっと先にある彼の両親の自宅へ向かい、私は2年ぶりに会う友人との待ち合わせ場所へと向かうためにバス停で ”Have a nice day!(良い一日を)”と言って別れた。

後から聞いた話では、彼は長距離の電車の乗り場を間違えてしまって焦ったそうだ。駅員さんに聞くと「今電車が出て、もう間に合わない」と告げられ、一瞬、肩を落としたらしい。でも、その後、その駅員さんは「冗談ですよ、サー(イギリスでの男性に対しての丁寧な呼び方)。今から行けば間に合います。実は私、面白い人になりたいので冗談を言ったんです。」と言ったそうだ。彼は「あなたは面白いかもしれないけど、僕は全然面白くないです。」と返したと言っていた。私はそれを聞いて、その時の駅員さんの対応は間違ってるかもしれないけど、イギリスらしい皮肉交じりの冗談だなと、妙に納得してしまった。

 

http://amore-breakfast-restaurant.business.site